長崎バイオパークに十年以上通ってきて、ずっと気になっている動物がいます。
カバです。
カピバラやリスザルのように触れ合えるわけでも、フラミンゴのように手からエサをあげられるわけでもない。でも何度来ても、気がつけばカバのそばでぼんやり立っています。
理由はたぶん、あの目のせいです。
モモちゃんも目が会いますが、デメタさんの眼力には及びません。
気のせいでしょうか?
なにか語りかけたいような雰囲気を感じて、じっと池の中にいるだけなのに離れらません。
水面からそっと目だけ出して、こちらをじっと見ている。
「見られているな」とわかるのに、何を考えているのか全然わからない。
その不思議さが、なぜか足を止めさせます。
ふと思うことがあります。カバは私たち人間のことを、いったいどう見ているんだろう、と。
カバの目・耳・鼻は水面に集中している

まずカバの体の話を少しだけ。
カバは目・耳・鼻が頭の上にまとまって配置されています。水の中に体を沈めたまま、周囲の状況を観察できる構造です。あのぼんやりしているように見える水面の姿で、実はかなりの情報を集めているはずです。
誰が来たのか、エサを持っているか、どんな動きをしているか。水の中からしっかり観察している可能性があります。
「ぼーっとしているように見えて、実はよく見ている」。そういう生き物です。
人間をどう分類しているのか
動物行動学の研究によると、カバは記憶力が良く、日常のルーティンや個体の違いを学習する能力があるとされています。
長崎バイオパークのカバたちも、おそらく来園者をざっくりと分類しているのではないかと思います。
まず「エサを持っている人」。これが最重要です。
エサやりの時間になると、カバはこちらをかなり真剣に見ています。
でもそれは「かわいい人間が来た」ではなく、「その手に何を持っている?」という目線である可能性が高い。
エサの容器を持っているかどうか?スタッフがバイクで近づいて来ていないかを、遠くからでも確認しているように見えます。
次に「毎日来る常連さん」。
顔までは識別できないかもしれませんが、声や歩き方、行動パターンなどで覚えている可能性があります。
動物園では飼育員と来園者への反応が明らかに違うことが多く、これは個体識別能力があることを示していると勝手に思い込んでいます。
そして残りの来園者は「気になる動く物体」くらいの認識ではないかと、十年以上通ってきた感覚として思っています。
人間の赤ちゃんも足音聞いて、すでに泣き出す人がいます。
顔を見ても最初から泣かない方もいます。
動物は人間を含めて不思議な能力があるのでしょう。
私は今日あった赤ちゃんには泣かれました・・・少しショックでした。

この大きな口で小さなペレットまできれいに食べるのです。
器用だと思いますよね?
カバは人間を怖いと思っているのか
野生のカバはアフリカで最も危険な大型動物のひとつです。
縄張りや子どもを守るために、人間へ攻撃的になることがあります。
でも長崎バイオパークのカバたちは、幼い頃から飼育員や来園者のいる環境で育っています。
人間は「危険な存在」ではなく、「環境の一部」として認識されているはずです。
毎日池の周りに現れて、何かを見て、勝手に騒いで、去っていく。
そういう存在として、淡々と受け入れられているのかもしれません。
モモちゃんたちは何を考えているのか
これはあくまで想像ですが、エサやりの時間になるとカバたちはこんなことを考えているのではないかと思うことがあります。
「また来たな」「今日はニンジンあるかな」「エサの容器を持っているぞ」「早く口を開けた方がもらえそうだ」「今年もスイカの季節になったな」。
実際、動物園のカバは人間の行動パターンをかなり学習します。
決まった時間になると待機したり、飼育員が近づくと反応したりする。
あの大きな体で、意外とこまめに情報を処理しているわけです。
妄想と組み合わせるとなかなか離れられません。
あの大きな唸り声も耳に強く残っています。
カバの前では肩書きが関係ない
十年以上カバを眺めてきて、ひとつ気がついたことがあります。
カバは人間を評価しません。
服装も、肩書きも、年齢も、収入も、カバには関係ない。
あるのは「この人は何をする人かな?」という純粋な興味だけでしょう。
だからカバの前に立つと、少し気持ちが楽になるんだと思います。
何者かである必要がない。ただそこに立っているだけでいい。
長崎バイオパークの2頭のカバにとって私たち人間は、
「毎日池の周りに現れる、ちょっと騒がしいけれどエサを持ってくることもある大型の二足歩行動物」くらいの認識なのではないでしょうか。
そして意外と、私たちがカバを観察している以上に、カバも私たちを観察しているのかもしれません。水面からそっと目だけ出して、今日も静かにこちらを見ながら。

行きたいと思ったときがチャンスです
行きたいと思う気力が有るときに行きましょう



